チャプター4

ストレート・リードは、ジャブに似たものではありません。

効果的に打つには、かなり特殊な手順が必要となります。

これは、すべてのパンチにいえることですが、その中でもストレート・リードが最も修得することが難しいです。

なぜなら、ブルース・リーとエドウィン・ヘイスレットのどちらも、ストレートパンチは「自然な動きではない」「芸術だ」と述べているからです。

ヘイスレットは、「完璧に打つには何年もの練習が必要」だと書いています。

そして、ブルース・リーは自身の著書の中で、このパンチを研究していくには、ジークンドーを正しく理解する必要があると述べています。

ストレート・リードのメカニズムの裏にある原理・原則は、ジークンドーの他のテクニックと同じです。

パンチやキックのインパクトの瞬間のスピードとパワーを最大限引き出す必要があります。

さらに、それは構えから最小限のモーションで行われなくてはなりません。

体のパーツを正確な手順で動かすことによって加速を最大化させることができます。

これは運動連鎖と呼ばれるものです。

ここで覚えいておいてもらいたい大事なことは、ブルース・リーが他の格闘技のパンチをまねしたわけではないということです。

フェンシングやボクシングの影響を受けたのは確かですが、フェンシングやボクシングの技術をちょっとずつ取ってきて混ぜたと考えるのは浅はかです。

ストレート・リードは科学的に作られた技術ですので、正しい手順を学ばなくては意味がありません。

手順は以下の通りです。

1 前足荷重にし、ドロー・インする

2 前手

3 プッシュ・オフ

4 腰の回転と腕の伸長

5 ターゲットに当てる

6 前足の着地

7 後ろ足の着地と前手の引き戻し

では、それぞれのポイントを確認していきましょう。

1 前足荷重にし、ドロー・インする

生物力学とプッシュオフの項目で説明したように、前足に荷重することで、手足や重心を移動させやすくすることができます。

後足のかかとを上げて腰を回し、体を若干正面に向かせます。

これは、相手に気付かれないくらいのほんの少しだけです。

これによって重心が上がり、前方に移動します。

これが、ブルース・リーが書いていた「前方への重心のわずかな移動」です。

バランスを崩してしまうほど前に重心を移動させてはいけません。

ついでに言っておくと、この移動は準備ではありません。

相手に気付かれてしまってはいけません。

相手を仕留める直前に前方へわずかに重心を移動し、ロケットのようにプッシュオフします。

ストレート・リードのための他のわずかな動きには、体幹の安定というものがあります。

体幹トレーニングは、ここ数年フィットネス業界で大流行しています。

簡単に言えば、「体幹」とは、手足以外の部分です。

それは、腰椎-骨盤-股関節複合体と呼ばれます。

広背筋、脊柱起立筋、腸腰筋、ハムストリングス、内転筋、腹直筋と外腹斜筋、腰椎多裂筋、骨盤底筋と横隔膜を含むコアマッスルの外層については、よく知られていますね。

これらの筋肉の下には、安定剤として機能する筋肉のグループがあります。

そして、動きの安定した基盤を提供するために活性化される必要があるのはこのグループになるのです。

これらの安定剤には、腰椎の骨盤と仙骨の椎骨をつなぐ深層の筋肉および腹横筋の内部斜筋の腰椎多裂筋の骨盤底筋と横隔膜が含まれます。

それらは、直接動きを生み出さないかもしれませんが、それらの活性化は手足を動かすために必要です。

この安定化は、外筋が活性化する前の30~110ミリ秒の間に発生します。

したがって、野球のバットを振ったり、バレーボールでスパイクしたり、ラットプルダウンをしたり、パンチを打ったりする直前に、パフォーマンスを最大化するために、これらの安定剤を活性化させる必要があります。

そうしないと、安定化されないことにより無駄な動きが多くなり、効率が悪く、弱そうに見えます。

この活性化の意識を感じられるように、スポーツ医学の国立アカデミーが『ドロー・イン』と呼ぶものを練習するようにしてください。

以下のように実践してみましょう。

1.深呼吸します。これにより、横隔膜が活性化され腹横筋と連動します。

その際、胸郭を持ち上げないようにしてください。

2.息を吐きます

3.へそを引き込みますが、腸を引き込まないようにします。

引き込むことは微妙な筋肉の活性化であるため、おなかがへこむほどはっきり見えるべきではありません。



つづく・・・